転勤・単身赴任廃止の議論が活発に!-テレワークの拡大

転勤・単身赴任を廃止する大手各社

NTTが転勤・単身赴任廃止の検討を発表し、経営スタイルの変革策を打ち出したことが各ニュースでも取り上げられ、今話題となっています。2025年を目途にオフィス勤務からテレワークを基本とする勤務環境に整え、社員自らが働く場所を選択可能にしていくというものです。また、自宅でも仕事がしづらい社員のために全国の自社施設にサテライト拠点を作り、他社の社員にも開放する構想を打ち出しています。

また、同様にJTB・AIG損保・富士通など、全国転勤が当たり前であった大企業を中心に転勤制度の見直しが進められています。JTBでは、転居を伴う転勤や異動が命じられれても、本人の希望と会社の承認があれば、転居せず、テレワークを中心に居所で業務に取り組むことができる「ふるさとワーク制度」を2020年10月にスタートしました。すでに転居を伴う転勤をしている社員が「ふるさとワーク制度」を希望する場合は、会社の承認が下りれば、転居前の拠点に戻に業務を行うことが可能になります。

テレワークへのスイッチで転勤・単身赴任を廃止

近年、労働人口の減少や価値観の変化に伴い、働き方に制限のある人が増えてきたことや情報技術の発達により、これまでは物理的に難しかった仕事も進めることが可能になったことからテレワークを含めた働き方の多様化に向けて、「ジョブ型雇用」に切り替えている大手企業も増えています。

一方で、中小企業の多くは日本型雇用とも呼ばれるメンバーシップ型雇用を採用しており、転勤や異動によるジョブローテーションを繰り返しながら経験を積ませ、ゼネラリストを育成してきた実績があります。今後、新型コロナウイルスの感染が収束した後もテレワークを前提に、日本の伝統的な経営手法である転勤や単身赴任を廃止にする企業は増えていくのでしょうか。

テレワークのデメリットが顕在化

コロナの影響によりテレワークの普及が進んでから1年半。テレワークの最新の情勢をみると、テレワークの実施率は全国で32.2%と前回と比べて僅か1.4%伸びとなり大きく鈍化しています。

内閣府:第4回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(9/28~10/5)

テレワークの実施率は全国で32.2%

また、前回調査と比べて金融・保険・不動産業、卸売業、その他サービス業(対事業所サービス)といった業種においてテレワークの実施率が下がっており、オフィス勤務に戻していることが見受けられます。

そしてテレワークのデメリットですがコミュニケーションや情報のやりとりに関する課題が上位3つを占めています。

内閣府:第4回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(9/28~10/5)

テレワークのデメリット

日本の転勤制度は、社員にとっては、転居を余儀なくされ、パートナーや子供の生活にも影響を及ぼすため働く人にとって負担が大きいという意見もあります。一方、同じ仕事を続けることにより凝り固まった仕事の進め方が、転勤をきっかけに変化し、転居先で人脈拡大につながるといったメリットもあります。また、企業にとっては転勤してきた社員の新しい価値観が加わることで仕事内容やチーム内の雰囲気を変えるきっかけにもつながります。

中小企業の転勤・単身赴任の考え方とは

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、近年、転勤を廃止する大手企業の取り組みが注目を集めていますが、自社の転勤制度の在り方を見直す際には、転勤の目的や効果を改めて検証し、現状を踏まえたうえで課題の多いテレワークと、それらを前提とするジョブ型雇用への切替が可能なのか等、十分に検討する必要があります。

場合によっては、転勤制度の廃止を検討する前に、転勤期間やエリアを限定化したり、育児や介護が必要な時期には一定期間の転勤を停止する等、社員の状況を配慮した新しいルールを盛り込むことも肝要です。自社にとって効果的な転勤施策を再考してみてはいかがでしょうか。