「時間外労働の上限規制への対応、準備できていますか?」-労務トピックス(アングル2018年8月号)

「働き方関連法」が成立し、今後の働き方や賃金の在り方が変化していきそうです。時間外労働の上限規制の適用は、大企業では2019年(平成31年)4月から、中小企業でも2020年4月からとなります。「まだ成立したばかりだし、これからゆっくり考えよう!」と思っている皆さんは注意が必要です。


時間外労働の上限規制とは?

労働基準法では、労働時間は1日8時間、1週40時間と定められています。この法定労働時間を超えて労働させる場合には、労使間で「36協定」(時間外労働・休日労働に関する協定)を結び、労働基準監督署へ届出る必要があります。

しかし、繁忙期や予想外の受注を受けた時など、36協定の上限時間を超えざるを得ない場合もあるため、特別条項を付帯し、36協定を届出ることにより、一定期間について、36協定の上限時間を超えて時間外労働をさせることができます。この場合における上限時間については規定がありませんでした。

改正労働基準法

ポイントは「時間外労働の上限規制」です。特例条項にも上限規制がなされます。

  1. 原則は「月45時間・年360時間」です
  2. 特別な事情がある場合でも、年720時間以内
  3. 休日労働※を含んで、2~6ヵ月平均で80時間以内
  4. 休日労働※を含んで、単月で100時間未満
  5. 月45時間を超えていいのは、年6回までとなります。

※休日労働とは、法定休日の労働をいいます。

「休日労働」は、休日以外に残業する「時間外労働」と区別されています。時間外労働が対象となるのは、「月45時間」「年720時間」などです。一方、「2~6ヵ月平均で80時間以内」「単月100時間未満」などの規制は、休日労働も含めた「過労死ライン」に準じて新たに設定されたものです。


勤怠管理できていますか?

日本商工会議所が全国の中小企業を対象に実施した調査では、約2割の企業が「新たな上限規制に抵触する労働者がいる」と回答しています。大企業は2019年4月に施行となりますので、上限規制を超える残業が慣習となっている会社は、この規制に抵触しないように時間外労働を削減する必要があります。ただし、建設業、自動車運転業務、医師等については5年間猶予され、適用が2024年4月からとなります。

「休日労働を含む」「休日労働を含まない」など、間違いやすい項目もありますので、まずは勤怠管理を徹底することが大切です。会社がしっかり従業員の勤務管理をしてください。さらに、改正後は、罰則規定(6ヵ月以下の懲役、30万円以下の罰金)が盛り込まれますので、認識不足で法令違反とならないようにしましょう。

中小企業においても、1年半後の2020年4月からの施行となりますので、時間外労働の削減への取組み、従業員の勤怠管理に注力いただきたいです。ご質問ありましたら、ご相談ください。


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