政府が「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表して以降、労働契約法20条(期間の定めのあることによる不合理な労働条件の禁止)をめぐる裁判の判決が次々に下されています。
今年6月には2つの重要な最高裁判決がありました。1つは正社員と契約社員の待遇格差を争点とした「ハマキョウレックス事件」、もう1つは、正社員と定年後の再雇用者の待遇格差を争点とした「長澤運輸事件」です。
いずれも賃金の相違の判断に際して、「賃金総額を比較するのみでなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」との最高裁初の判断を示しました。
労働契約法をめぐる裁判の概要と最高裁の判決結果
【ハマキョウレックス事件】
正社員(無期)と契約社員(有期)との待遇差
物流会社のトラック運転手(契約社員)が正社員にのみ支給される諸手当について不合理な格差であるとして差額の支払い等を求めた事件
■通勤手当の格差は不合理(大津地裁H27.9.16判決)
■1審に加え、無事故手当、作業手当、給食手当の格差は不合理(大阪高裁H28.7.26判決)
■2審に加え、皆勤手当も不合理(最高裁 H30.6. 1 判決)
【長澤運輸事件】
正社員(無期)と定年後再雇用者(有期)との待遇差
定年再雇用された嘱託社員が定年前と同じ職務内容にかかわらず賃金が約2割減額されるのは不合理な格差として差額の支払いを求めた事件
■継続雇用後の賃金引下げは不合理(東京地裁H28.5.13判決)
■継続雇用後の賃金引下げは不合理ではない(東京高裁H28.11.2判決)
■継続雇用後の賃金引下げは不合理ではないが、精勤手当、通勤手当は不合理(最高裁 H30.6. 1 判決)
まずは、1つ1つの賃金項目の趣旨を確認することがスタート!
(1)基本給、諸手当(福利厚生などの手当等)のそれぞれについて、雇用区分の相違による待遇差を洗い出す。
(2)基本給待遇格差のある手当等について「どのような趣旨・目的」で支給されているものであるか、待遇格差がある手当等については、その根拠を明らかにし、格差を設けることに合理的な理由をもって説明することができるのかを検討する。
(3)基本給手当の支給要件が必要な場合や新しく諸手当を新設する場合、待遇格差を設けるのであれば合理性がある旨の説明ができるよう配慮しながら制度設計を行う。
今後は賃金、福利厚生、キャリア・能力開発など多岐にわたり、不合理な待遇差があれば、その解消のためスピード感もって取り組んでいかなければなりません。
正規・非正規間の「均等・均衡」処遇をどのように捉え、賃金制度自体をどのように見直すべきなのか、お困りの際は是非ご相談ください。
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