ミスマッチをなくす人事評価項目の設定とは?

「人事評価は難しい」とよく聞きます。

なぜ、手間をかけて人事評価制度を作り、管理・運用をしていく必要があるのでしょうか。
人事評価制度は、給与額を決定する物差しの役目だけでなく、次のような効果が期待できるからです。

  • 公平で納得感のある評価ができ、社員のモチベーションの向上や人材定着につながる
  • 評価項目を通じて会社の方向性を社員に示せる
  • 評価のサイクルを回すことで、メンバーの職務遂行能力や管理職のマネジメント力のアップにつながる(人事育成の仕組みができる)
  • 結果として、業績に跳ね返ってくる

人事評価項目の設定とは?

しかしながら、人事評価制度を運用してみると「会社の方針や業務内容」と「評価の項目」がミスマッチで、うまく機能しないことがあります。

適切な評価項目が設定されないと、どのようなことが起きるのでしょうか。


会社の方針と評価項目がミスマッチの場合

①「会社が社員に期待する方向性」と「社員が評価項目を意識した行動」にずれが生じる
②結果として期待した人材に育たない
③評価項目を達成したとしても業績に結び付かない

社員個人の業務と評価項目がミスマッチの場合(担当業務と関係のない評価項目・抽象的な評価項目)

①管理職(評価者)は、感覚で評価することになる
②部下(被評価者)に対して、適切なフィードバックをする自信がなくなる(なぜ、その点になったか論理的に説明できない)
③説明できないので、無難な中間点に置きにいく【例】5段階の評価で「3」とする
④各項目が中間点に集中する
⑤差がつかない評価制度になってしまう
⑥「頑張っても差がつかないなら」と評価業務に真摯に取り組まず、形骸化する
⑦評価制度を通じてのモチベーションアップにつながらない


よって、人事評価制度の効果を引き出すためには、会社の方針と個々の社員の業務や課題に応じて、評価項目を決定することが求められます。

そして評価の対象としては、業績などを定量的に評価する成果評価と社員の行動など定性的に評価する行動評価があります。また一般的な行動評価の仕組みは、会社が評価項目を決定し評価する方法ですが、社員自身が目標を作り、目標の達成度を評価する目標管理制度があります。

★成果評価
★行動評価
  └目標管理制度

今回は、ミスマッチが生じないよう3つの仕組みにおける項目の決め方についてお伝えいたします。

成果評価

成果評価とは、会社経営上求められる数値を個人やチームに当てはめて定量的に評価するものです。項目は業績、ミッション、それらを達成するためのプロセスなどから決定していきます。
具体的には次のような項目が考えられます。

成果評価とは

最終的なゴールとなる「売上高」とこれらを達成するためのプロセスを整理して、評価項目に落とし込みます。

例えば、エステ店で1年間の売上高を1億円に設定します。客単価が1万円であれば、お客さんが1万人必要となります。新規のお客さんが3,000人とすると、延べ7,000人に再来店して頂く必要があります。

よってエステシャンには、お客さんのリピート率を上げるために、「リピート顧客数」を評価項目とし、マーケティング担当は、「新規顧客の獲得数」とします。この場合エステシャンが「私の評価項目はリピート顧客数だから新規顧客を獲得することへの協力や客単価を上げる努力は必要ない」と思われないように最終的なゴールである売上高を組み合わせることが必要です。

全体的な数値と役割から特に意識してもらいたい数値を評価項目に落とし込むことがポイントです。また「自分だけ数字をあげれば、メンバーを手助けする必要はない」と考えないようにするために、売上高についても個人だけでなく、店舗全体の売上高も評価項目とした方が良いでしょう。

経営者が店長やメンバーに「客単価」、「客数」、「荒利」、「在庫高」などを尋ねたときに即答できないことがないよう、評価項目にこのようなプロセスとなる指標を入れることで、従業員が数字を意識することにつながります。

行動評価

仕事のできる人の行動特性の「コンピテンシー」や仕事に取り組む姿勢の「情意」など、様々なカテゴリーがありますが、ひとくくりにすると行動に対する評価です。行動評価は最も会社の色が出やすい評価項目となります。次の点に基づいて項目を決定する必要があります。

● 事業内容、職務内容
● 会社が大事にしているポリシー
● その会社で仕事ができる社員の思考や行動
● 短期間で解決したい課題

具体的な項目例

項目 詳細内容
顧客志向 □ お客様の感動を共感でき、その気持ちを理解した上で相応しいサービスや接遇することの重要性を理解している
□ 自身の接客態度が自社への信頼や満足を大きく左右することを理解している
□ お客様の依頼や要望に添えない場合でも代替案を示す等、お客様に喜んでいただけるよう常に肯定的な対応をしている
□ お客様に配慮した丁寧な言葉遣いで応対するとともに好感をもたれる抑揚で言葉を伝えている
コミュニケーション □ 新人メンバーや注意すべきメンバー、メンバー間の組み合わせ等についてよく把握しており、必要に応じてチェックやフォローをしている
□ 現場メンバーの動きに対し効果的に賞賛したり、時には注意したりしている
□ メンバーから助力を求められたときには、的確なアドバイスができており、時には自ら対応するなどメンバーから信頼を得ている

「期限内に仕様通りの製品を納品する製造業」と「ホスピタリティーが求められるブライダル業」とでは項目はもちろん違います。同じ事業内容であっても「低価格で沢山のお客さんに提供したい」、「付加価値をつけてターゲットを絞り提供したい」など会社の方針により変わります。

また管理職であればマネジメントの要素、間接部門であればミスなくスピーディーにこなす要素、新卒であれば社会人としての基本的な素養など職種や職位によってかわります。

行動評価の項目は、事業内容・会社の方針・職種・職位ごとに項目を決定していく必要があります。

また行動評価についても成果目標の達成を意識した項目を設定することが求められます。成果と全く連動していないと、行動が達成できても業績に反映されないことになってしまうからです。(行動評価が高得点で昇給となるが、肝心な業績が伸びず昇給原資に影響する)

目標管理制度

目標管理制度とは、社員が個人ごとに自分のミッションや課題から、自ら目標を立て、達成に向けての挑戦や行動の改善を促すものです。すでに出来ていて得意なことを目標にしても効果が得られませんので、出来ていないことや新たな挑戦となることを目標とします。

また、成果目標の達成を意識した行動(プロセス)を目標にすることも効果的です。先ほどのエステシャンですと「リピート顧客数」を増やすために自分がすべき行動を目標に設定します。例えば次のような目標が考えられます。

リピート顧客数を増やすために

新規のお客様に対しては、来店翌営業日までに手書きの御礼状を作成し、少なくとも翌々営業日までには、郵送するように致します。

意識や意気込みでなく具体的な行動を書くことポイントです。

「なにを、いつまでに、どのように、どれ位の頻度で」

頑張ります・努力します・徹底します・意識します・効率化しますは、NGです。

目標管理制度は、自分の課題を見つめなおし自発的に目標を作成することから、課題解決の力がつき社員の底上げにつながります。また上司も、部下の目標の承認・アドバイス・フィードバックのサイクルを回すことでマネジメント力が磨かれます。

■ ウェイトの設定

項目が決まったら配点です。職種・職位に応じて配点を変えていきます。

ウェイトの設定

  • 営業部門は、会社の業績にダイレクトに直結するので成果項目の割合を増やす
  • 間接部門は、行動評価の割合を増やす
  • 管理職は、プロセスが出来ていることが前提で結果が求められるので成果項目の割合を増やす
  • 極端に割合にするとその項目に対する意識を及ばなくなってしまうのでバランスを取る

【例】バリバリの営業会社
(成果:行動)(90:10) → 結果営業マンは、行動を捨てる。

■ マイナーチェンジが必要

目まぐるしい経営環境の変化に対応するためには、評価項目の見直しが必要です。半年前の項目が陳腐化していることも珍しくありません。今回のコロナの影響により来店型のビジネスモデルからオンラインやテイクアウトへの切り替えなど、短期間での事業の見直しが迫られました。このような変更に対応するためにも評価項目の定期的な見直しが必要となります。

■ ビジョン共有としての人事評価

評価の項目とウェイトを調整することで、会社から社員に対してビジョンを共有することの効果が期待できます。会社は何を大切にしているのか、課題は何か、期待する役割は何かを項目で示し重要性をウェイトで調節します。期首の社員総会で、「既存顧客の満足度が最も重要だ」と熱く社員に語ったとしても「顧客満足」と結び付く評価項目がない、もしくはウェイトが低く、「新規顧客の開拓」が高く設定されていたらどうでしょうか。矛盾し説得力に欠けてしまいます。このようなことにならないためにも、あらためて自社の評価項目を見直してみましょう。

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