社員の役割の大きさを測る物差し「職務評価」とは
~同一労働・同一賃金への対応~

職務(役割)の大きさを定量的に判断する方法が「職務評価」

2020年10月に最高裁で賞与、退職金、手当等の正社員と非正規社員との不合理な待遇格差について判決がありました。

結果は賞与・退職金については不合理でない。扶養手当・年末年始手当・病気休暇・夏期冬期休暇といった手当・休暇は、不合理であるので非正規社員にも適用するようにとなりました。

同一労働・同一賃金の基本的な考え方と正規社員と非正規社員との不合理な待遇格差を争った最高裁判例についての解説は、こちらのコラムをご覧ください。「同一労働同一賃金 手当・賞与・退職金の待遇格差についての最高裁判決のポイント」(2020年11月16日公開)

今回の判決は、今後賞与・退職金・手当の正規社員と非正規社員との格差の不合理性を判断する上での材料になりました。(あくまで最終的には、企業ごとの状況により判断する)

一方で基本給の水準の格差については、正社員と非正規社員の労働時間や給与の支払い方法(月給・日給・時給)の違いや日本特有の職務が曖昧なメンバーシップ型雇用により、バランスがとれているかを判断することが難しいとの声をよく聞きます。

バランスを判断するためには、「何となく正社員のBさんは、オフィス内を慌ただしく動いているので大変そう・・・」のような感覚でなく、社員が納得できるよう定量的に判断する物差しが必要になります。

社員が納得できるよう定量的に判断する物差しが必要

今回は職務(役割)の大きさを定量的に判断する方法「職務評価」についてお伝えします


職務評価のイメージは次の通りです。

職務評価のイメージ

出典:厚生労働省 職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル/日本クレアス社会保険労務士法人改編

職務評価の手順

(1)評価項目の決定

会社ごとに業務において求められる要素から項目を決定します。例えば、ホテル・エステ・ブライダル業などでは、コミュニケーション・ホスピタリティ等の対人折衝に関する項目が選ばれます。一方で製造業などでは、ミスがなくスピーディーにこなすような作業遂行の項目となります。項目数は多面的な評価が必要であれば、増やし、必要がなければ減らすことで調整します。

(2)ウェイトの決定

各評価項目のなかでも、会社にとって非常に重要な要素とそこまで重要ではないがある程度求められる要素など濃淡があります。重要度に応じてウェイトを決めます。

(3)スケールの決定(点数つけ)

職務の大きさや難易度から尺度を設定し、点数をつけます。点数は、該当する社員を思い浮かべて、その人が携わる業務を洗い出し項目ごとに決めます。例えば「専門性」を5段階の尺度で評価するのであれば、スケール「5」は高い専門知識が求められ、「1」は専門知識がなくともつとまる業務ということになります。

スケールの決定(点数つけ)

(4)ポイントの集計

ウェイトにスケールを乗じて得た、ポイントを合計します。合計ポイントは、25ポイントです。こうすることで職務の大きさが数値化されます。

ポイントの集計

職務ポイントを通じた基本給の水準の確認

例えば職務評価の結果、AさんとBさんのポイントが同じであったとすれば職務(役割)の大きさが同じことになります。

職務ポイントを通じた基本給の水準の確認

この場合本来は同じ給与額であることが求められますが、実態は500円の差があります。しかしこの職務ポイントには、正社員のBさんが将来、転勤の社命があった場合に従う必要があるかなどの負担に関する要素が含まれていませんので、転勤がないAさんの時給に係数をかけ調整をした上で比較を行います。(今回は、転勤がない分0.9をかける)結果として350円の差となり、この水準の差を引き上げるなど検討する必要があることになります。

このように職務評価を実施することで、基本給額のバランスを確認することができ、引き上げる水準額の検討材料にもなります。


国も非正規社員の待遇格差の見直しにあたり、職務評価を推奨しています。非正規社員の待遇改善を行った場合の助成金制度としてキャリアアップ助成金が設けられています。

このなかで職務評価を実施し、結果に基づき非正規社員の基本給水準を引き上げた場合に受給できる助成金もあります。このよう制度を活用しつつ契約社員やパートタイマーの一層の活躍つながるような賃金制度の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

日本クレアス社会保険労務士法人の人事制度コンサルティングサービスについて

優秀な人材の定着には、貢献を反映した給与額の決定が必要です。日本クレアス社会保険労務士法人では、適正な職務評価を行う評価制度の構築支援、職務評価に基づく賃金制度の構築支援を行っています。

また、複雑で手間のかかる助成金の申請をサポートする「助成金の申請代行・サポート」も行っています。非正規社員の正規化・待遇改善のほか、労働時間等の設定改善、人材開発、雇用環境の整備などの取組への助成金申請を支援しています。

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