導入への議論が活発化する週休3日制について

自民党の一億総活躍推進本部は4月23日、希望者が週3日休めるようにする「選択的週休3日制」を導入するよう坂本哲志一億総活躍相に提言し、メディアが大々的に取り上げました。

コロナを通じてリモートワークが浸透したことで、日本社会にも柔軟な就労形態への対応力があることが分かり、さらに少子高齢化が進む中で、育児・介護・高齢者など就労に一定の制限がある人が持続的に働き続ける環境を整備する必要性が、より求められていることなどが提言の背景にあります。

目次

1.「選択的週休3日制」とは
2.「選択的週休3日制」の採用企業の事例
  ┗ みずほフィナンシャルグループ
  ┗ ユニクロ
  ┗ リクルート
3.「選択的週休3日制」の導入への課題

1.「選択的週休3日制」とは

希望する就労者に、企業が1週間に3日の休日を付与する制度であり、その休日を育児、介護の両立のために活用したり、地方での副業やボランティア活動に利用したりと様々な利用のシーンが考えられます。しかしながら現状は、1週間の休日数を増やすような働き方をしている労働者の割合は、約1割程度と少ない状況です。

    完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度(月1回以上の週休3日制、3勤3休、3勤4休等をいう。)が適用されている労働者割合は9.8%

    (令和2年就労条件総合調査 厚生労働省)

週休3日制が浸透するためには、様々な企業の取組を周知することが求められます。

2.「選択的週休3日制」の採用企業の事例

すでに週休3日制を取り入れた企業では定着に向けて様々な取り組みを導入しています。

みずほフィナンシャルグループ

制度の内容 ・従業員の選択による週休3日制、または週休4日制の導入
・週休3日制の場合は給与額を8割、週休4日制の場合は給与額を6割とする
目的・背景・効果等 ・多様な働き方の促進。増えた休日をリカレント教育や資格取得、前年に解禁した副業と合わせて今後の業務の充実やセカンドキャリアの形成につなげることを後押しする

ユニクロ

制度の内容 ・変形労働時間制を採用し、1日10時間・週4日勤務とする               
・給与は、1日8時間・周5日勤務の従業員と同額
目的・背景・効果等 ・育児・介護の両立や自己研鑽
・多様な働き方を促進することで、人材獲得に結び付ける

リクルート

制度の内容 ・取得日を自由に選択できる休日の追加することで、年間休日を130日から145日に増やす。結果として年間平均で週休2.8日を実現
・休日を増やす一方で、1日の所定労働時間は7.5時間から8時間に変更。給与額は変更前と同額
目的・背景・効果等 ・多様な背景を持つ個人が、創造性を最大限に発揮できるよう、自律的に働き方を選べる環境の整備

この他にもフレックスタイム制を併用して1か月間の所定労働時間を変えずに週休3日制を採用したり、季節限定や交代制で行っている企業もあります。

中小企業には週休3日制は浸透しにくいといった意見もありますが、事例を見て頂くと働いた時間ではなく成果が求められる事業やサービス業においても活用の余地があることが分かります。

3.「選択的週休3日制」の導入への課題

労働日が1日減ることで、取引先などへ影響が出ないよう交代での取得や引継ぎの徹底を行うことが求められます。せっかく制度を導入しても運用ルールが整備されていなければ、他の人にシワ寄せが生じる可能性もあります。

所定労働日の多寡に応じて適切な評価の仕組みを設定できるかどうか、場合によっては評価の方法や評価項目、給与の水準についても見直しが求められます。


選択的週休3日制を有効的に活用できれば、従業員の定着や採用でのアピールにつながります。特にITなどのクリエイティブ系の職種では、優秀な人材の獲得のために選択的週休3日制を導入している企業もあります。

また兼業・副業を合わせて解禁することで、従業員が増えた休日を活用しフリーランスとしての事業や別の会社で得た人脈や経験を自社の業務に生かすことも期待できます。

副業のメリット・デメリット、企業に求められる対応など、こちらのレポートで詳しく解説しています。併せてご参考ください。

レポート:「副業・兼業」トラブル防止のためのルール整備について-コロナの影響により脚光を浴びる副業・兼業

今後はテレワークにとどまらず、選択的週休3日制の導入を視野に入れ、さらなる柔軟な働き方を検討してみてはいかがでしょうか。

就業規則・人事関連諸規定の整備のお悩みは、日本クレアス社会保険労務士法人にご相談ください。法令への対応だけでなく、企業の実情や社会の動向といった観点からも諸規定の整備をサポートします。

この記事を執筆した社会保険労務士

日本クレアス社会保険労務士
ディレクター 社会保険労務士 中山 啓子

2012年日本クレアス社会保険労務士法人の設立に携わり、ディレクターに就任。上場企業から中小企業まで規模の大小を問わず、人事労務相談や就業規則改訂、人事制度設計、労務デューデリジェンスに従事。コンプライアンス対応、労使バランスを重視した実践的な研修及び人事労務セミナーを年間20本開催。

日本クレアス社会保険労務士法人は、日本クレアス税理士法人、株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング、株式会社コーポレート・アドバイザーズM&Aの主要3法人とグループを形成し、総合型会計事務所グループとしてワンストップでサービスを提供できることを強みとしている。