高齢者の就業機会の確保に関する法改正 ~70歳定年に向けて~

  • 2020年11月30日公開

2021年の4月1日より、70歳定年に向けた法律の改正が行われます。少子高齢化が急速に発展する中で経済社会の活力を維持するために、働く意欲のある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高齢者が活躍できる環境の整備を目的として、2021年4月1日より高齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)の一部が改正されます。

70歳までの就業確保措置の実施

今回の法改正の目的は、働く意欲のある高齢者の就業機会の確保であり、決して定年を70歳に引き上げることを義務付けるものではありません。事業主が高年齢者就業確保措置のいずれかを制度化する努力義務を設けるものです。

現行の制度では事業主は以下の措置を講じることが義務付けられています。

<高年齢者雇用確保措置>

①65歳までの定年引上げ
②65歳までの継続雇用制度の導入
③定年廃止

改正後は、年齢が65歳から70歳に引き上げられ、新たに2つの措置が設けられました。

<高年齢者就業確保措置>

70歳までの定年引上げ
70歳までの継続雇用制度の導入
③定年廃止
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度

新設された④・⑤は、雇用以外の措置です。70歳まで働き続けるために、例えば65歳になったらフリーランス、または起業して今まで勤めていた会社と業務委託契約を結ぶこともできます。

なお④・⑤の措置を実施する場合は、労働者の過半数を代表する者や労働組合の同意を得る必要があります。

今回の法改正は努力義務ですので直ちに実施しなければならないわけではありませんが、過去の定年の引上げの法改正の変遷から、努力義務を経て義務化されることが考えられますので、将来を見越した検討が必要です。

65歳以上の副業・兼業者への雇用保険の適用拡大

2022年1月1日から高齢の副業・兼業者を保護することを目的として雇用保険の適用の拡大が5年間にわたり試行的に実施されることになりました。

前提として雇用保険の被保険者となる要件は次の通りです。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用見込みがあること

よって、兼業者については、一つの勤め先で、1週間の所定労働時間が、20時間を下回る場合には、雇用保険の被保険者になることはできませんでした。

今回の法改正により65歳以上に限り、勤めている二つ以上の事業所で1週間の所定労働時間を合計して20時間以上となり、本人が申し出た場合は、雇用保険の被保険者になることができます。

少子高齢化による労働力不足の解消、長年の勤務で培った技術の伝承、人脈の活用などシニアの活躍に期待する場面は今後も増えていくと考えられます。国も高齢者、複数就業者等に対応したセーフティーネットを整備し始めていますので、企業もシニア層の活躍を見据えた環境つくりを検討していきましょう。