テレワークに対応できる就業規則とは?-コロナの影響により多様化する働き方に対応する

新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークが急速に浸透しています。今やビジネスでは無くてはならなくなったオンライン会議システムの「ZOOM」は2020年4月に全世界で会議利用者数が1日あたり3億人を超えています。

日本においてもコロナの影響により、内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によるとテレワークを経験した人の割合が34.6%と3人に1人が経験していることになります。

東京では、4月のテレワークの導入企業の割合が62.7%と僅か1か月前の24%から2.6倍になり短期間で爆発的に伸びています。この他にも時差出勤やフレックスタイム等を経験された人の割合が9.3%となっています。

 

質問:今回の感染症の影響下において、経験した働き方を全て回答してください。

今回の感染症の影響下において、経験した働き方

(内閣府 令和2年6月21日新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査)

 

テレワーク導入企業の割合

(東京都調査 対象:従業員30人以上・都内企業調査時期:2020年3月(回答数400社)/2020年4月(回答数394社))

コロナ終息後も多様な働き方への対応が求められる

企業はコロナ終息後についてもテレワーク等の多様な働き方への対応が求められます。
社員にとってもテレワークを経験し通勤のストレスからの解放やプライベートの充実を感じました。そして自身の業務をオフィスで行う必然性が無かったことに気づくきっかけにもなりました。このことは調査結果からも伺えます。約40%の人が今後もテレワークを利用していきたいと回答しています。

一方で企業にとってもテレワークにより賃料の高い都心にオフィスを構える必要がなく、定期券代の支給から出勤日に応じた交通費の精算に切り替えることでコスト削減につながります。まさにコロナが呼び水となり、終息後も多様な働き方の浸透が進むと思われます。

 

今後、どの程度の頻度でテレワークを使用してみたいですか

内閣府 令和2年6月21日新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

テレワークを導入する際の就業規則見直しのポイント

浸透が進みつつあるテレワークですが、ルールが決まっていないと業務に支障をきたす恐れがあります。テレワークにより、社員のプライベートと仕事の境界が曖昧になる、部下の仕事ぶりの把握が困難になるなどのことから、次のようなトラブルが考えられます。

  • 出社して欲しいときに、出社してもらえない
  • 仕事を怠ける・仕事をし過ぎる
  • 連絡したいときに連絡が取れない
  • 業務の報告がない
  • 情報の漏洩

したがって、トラブル防止の観点からも就業規則にテレワーク時の勤務について規定する必要があります。また、テレワークにより光熱費や通信費を社員に負担させる場合には、就業規則に規定することが労働基準法第89条に定められています。

テレワークの実施に伴う、就業規則改定のポイントは次の通りです。

(1)テレワークの許可基準・許可手続
(2)テレワーク勤務中の遵守事項
(3)テレワーク勤務中における労働時間の設定と管理
(4)テレワークにおける費用負担

 

(1)テレワークの許可基準・許可手続

「届出制」でなく「許可制」とする

一定の要件を満たした社員が「届出」をすれば当然にテレワークを利用できる制度でなく、あくまで会社から許可を得た社員に限って利用できる「許可制」を採用することをお勧めします。すべての社員に無条件で認めてしまうと事業に支障をきたす恐れがあります。

また、テレワーク勤務中に「業務の報告を行わない」「怠ける」「仕事をし過ぎる」「連絡がとれない」など、真摯に業務に取り組まない社員が出たときは、テレワーク勤務を解除する規定を設けることが求められます。

 

(2)テレワーク勤務中の遵守事項

職務専念義務と情報漏洩についても記載

前項でも説明しましたが、トラブルにならないよう、服務規律にテレワーク勤務時における報告義務、適切な勤怠の登録等の記載をします。

また自宅に限らずシェアオフィスやカフェ、注目されつつあるワーケーション(観光地やリゾート地)などにより、機密情報がオフィスにいるときよりも、第三者にさらされる恐れが高まります。したがって情報管理等のルールついても記載する必要があります。そしてルールが順守できなかった場合には、懲戒処分が下せるよう懲戒事由の見直しも必要になってきます。

 

(3)テレワーク勤務中における労働時間の設定と管理

柔軟な労働時間の設定

いくら勤務中であったとしても、自宅にいることから家事から完全に解放されることはありません。子育て世代ですと、場合によっては勤務の合間にお子さんの面倒をみることも想定されます。なかには業務に専念するために自費でビジネスホテルのテレワークプランを利用したとの声も聞いたりします。

そこで社員のプライベートの充実の観点からも、始業時刻の繰上げ・終業時刻の繰下げ、休憩時間の分割利用などの検討も考えられます。その際は秩序なく乱用されないよう就業規則への記載が必要となります。

また休憩時間については労働基準法でサービス業など一部の業種を除き一斉に取らせることが義務づけられておりますので、休憩時間を社員の判断で分割してとるためには、労使協定の締結が必要となります。

 

(4)テレワークにおける費用負担

就業規則への記載が必要

繰り返しになりますが、社員に光熱費や通信費の負担を求める場合は就業規則の記載が必要となります。

またテレワークの実施に伴い通勤手当から、在宅勤務手当と出勤日に応じた交通費の実費の支給に切り替える企業が増えてきています。

在宅勤務手当については、月額固定にする方法と1日当たりの単価を決め、テレワークの日数に応じて支給する方法があります。この点についても就業規則の賃金部分の見直しが必要になります。

就業規則の改定の必要性について

期せずして、コロナの影響により働き方改革が加速しつつあります。優秀な人材の獲得・定着に向けて、テレワークをはじめとする多様な働き方に対応する必要があります。そして多様な多用な働き方を通じて仕事とプライベートを充実させるためには、社員も一定のルール(就業規則)を守りながら働くことが求められます。

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