短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大~平成28年10月より~-労務トピックス(アングル2016年2月号)

平成28年度税制改正では見送られましたが、配偶者控除の撤廃について、引き続き議論が行われています。一方、平成28年10月より、パートタイマー等短時間労働者(以下「短時間労働者」)に対する健康保険・厚生年金保険(以下、「社会保険」)の適用が拡大されます。

この改正によって新たに社会保険に加入することとなる短時間労働者は約25万人といわれています。

短時間労働者を多く雇用する企業においては、今後社会保険料が増加しますので、社会保険の適用拡大に対する対応策を検討する必要があります。


新たな社会保険の適用基準(例:正社員の所定労働時間が週40時間の場合)

現行では、週の所定労働時間が正社員のおおむね4分の3以上(正社員の所定労働時間が週40時間の場合には30時間以上)の人には社会保険の加入義務が発生します。

平成28年10月からは、下記1.から5.までの要件を全て満たした場合には、社会保険の適用対象となります。

ただし、5.の要件に関しては、3年以内に検討を加える予定になっています。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 勤務期間が(見込み)一年以上
  4. 学生は適用除外
  5. 従業員501人以上の企業

適用拡大の対象事業所となる従業員数501人とは?

今回の改正により、適用拡大の対象となる事業所は、全従業員数ではなく、「現行の適用基準」で社会保険の適用となる被保険者数が501人以上の事業所が対象となります。

例えば、正社員300人+パートタイマー300人(うち、250人は週30時間以上勤務のため、250人は社会保険に加入しています)の企業の場合

現行の適用基準による社会保険の被保険者は
正社員300人+パートタイマー250人(合計550人)→501人以上となるため、適用拡大の対象事業所となります。

今後、企業に求められる対応

社会保険の適用拡大は、保険料の負担増という企業への影響のみならず、労働者にとっても生活設計に関わる問題であるため、自社の短時間労働者の実情に合わせ、混乱を招かないよう適切な対応を考えていく必要があります。

社会保険に加入すれば将来の年金受給額が増加するというメリットはありますが、配偶者の扶養の範囲内で働きたいと考えている人にとっては、社会保険への加入が必ずしも歓迎されるとは限りません。そのため、中小規模の事業所に短時間労働者が流出してしまう可能性もあります。

企業としては、これまでの労働条件のままで社会保険に加入させるのか、または労働時間を短縮して基準を下回る働き方を選択させるのか、長期的な視点で検討する必要があるでしょう。今回の改正が、それぞれの短時間労働者の労働条件を見直すきっかけになると考えられます。


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